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2016年11月4日金曜日

これは小説である。 名前はまだ無い。




見取図



















1


[4/14(Mon) PM4:22]


 二階堂 遼登(にかいどう はると)は大きく息を吸い込んだ。

 「ヒュウウウゥ」

 この音は、今遼登が持っている木管楽器から発せられたものではない。遼登の口から発せられたものだ。

 「羽奏ちゃん、上手だね!」

 この音も、今遼登が持っている木管楽器から発せられたものではない。吹奏楽部の二年生、フルートパートの西本 風音(にしもと かのん)の口から発せられたものだ。柊 羽奏(ひいらぎ わかな)が勝ち誇ったように遼登に顔を向けるが、遼登は気づいていないようだ。

 「遼登君も頑張って!」

 一つ上の先輩の声にようやく我に返ったのか、手に持っていた木管楽器を口元から離した。

 「フルート難しいな。そもそも音が出ない」

 遼登が苦笑いを浮かべるのを見て、風音が優しく微笑んだ。

 「そっか。でも気持ちはよくわかるよ。最初は私だって音出なかったもん」

 その言葉に遼登は安堵の表情を浮かべる。不意に水城 京香(みずき きょうか)が口を開く。

 「風音さっき、合奏室から時代劇みたいな音が聞こえたのは気のせい?」





2


[4/14(Mon) PM4:23]


 「これは何ですか?」

 執行 航(しぎょう わたる)が、不思議な形状の打楽器を手に尋ねる。

 「ちょっと貸してみて!」

 秋永 美結(あきなが みゆ)が、いきなりそれの球体部分を膝に叩きつける。

 「おお!ちょっと貸してください!」

 航が同じように叩きつける。が、サッカー経験者の航はハンドキックの要領でそれを蹴り飛ばした。その不思議な形状の打楽器は美しい放物線を描き、ティンパニをかすめて床に落ちた。わざとやった訳では無かったようで、航は顔を真っ赤にして謝った。

 と、同時に合奏室の扉が開き、村上 大地(むらかみ だいち)が入ってきた。

 「美結、なんでヴィブラスラップ練習してるの?」

 「あっ、ご、ごめんわた......あっいや、何でもないの!」

 大地は一瞬怪訝そうな表情を浮かべたが、すぐに笑顔に戻って言った。

 「航もヴィブラスラップやってみる?」






 - To be continued -



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