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2016年11月4日金曜日

これは小説である。 名前はまだ無い。その2。




見取図





















3


[4/14(Mon) PM4:32]


 「一月十九日?じゃあなんでゆうかなの?」

 栗林 恵吾(くりばやし けいご)は驚いた様子だ。

 「わかんないんです」

 長門 夕夏(ながと ゆうか)は少し頬をふくらませていた。

 「教えてくれないんですよ、名前の由来。お父さんも、お母さんも」

 恵吾は少し考える素振りを見せたが、あまり詮索しない事にしたようだ。

 「で、もちろん気づいたと思うけど、隣には吹奏楽部専用の合奏室があるわけだ。」

 恵吾が壁を指差した。

 「あ、合奏室なんですか?」

 「そうだよ。もしかしてクラ口から入ってきた?」

 「くらぐち?」

 凛南(りんなん)高等学校の3号館には、三つの出入り口がある。新入生である夕夏が名前を把握しきれていないのは当然かもしれない。

 「そうそう。正式名称はクラウド口。ただ、みんなクラ口って言ってる。グラ口から入るとわかるよ。合奏室の前通るから。まぁただ、吹奏楽部員と鉢合わせる時ちょっと気まず......」

 「ちょっとすいません、ぐらぐちというのは......」

 「ごめん、グラス口」





4


[4/14(Mon) PM5:01]


 「流石に、二百三本はキツいな」

 二階堂 瀬那(にかいどう せな)は、肩で息をしている。

 「そういえばお前、なんでスパイク履かないの?」

 「めんどくせぇから」

 「マジか」

 桐原 新(きりはら しん)は苦笑した。新は元々短距離専門だったが、今は走り幅跳びだ。

 「23秒07、23秒32、24秒60」

 瀬那は特に反応しない。ストップウォッチを見ながらノートにタイムを記入している。

 「ちょっと待って、インターバル何分?」

 「二分」

 新が思わず吹き出した。

 「意味無ぇ」

 「いや、無くはないだろ。意味」

 気持ちのいい風が吹いてきた。新入生がスターティングブロックの使い方の説明を受けている。

 「そういえば、弟って部活どこ見学してんの?」

 一瞬不意を突かれたような表情を見せたが、すぐに答えた。 

 「遼登?分かんないけど多分......吹部かな」






 - To be continued -



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